古いハイヒールのリズム。

人間観察｜とある母子へのエール

こんばんは、さじです。

犬との散歩時間は季節の気温に合わせて変化するのですが、春秋は同じような時間に出かけます。近くの小中学校の登校時間と重ならないようにずらすと正確に同じ時間に出ることが続く。時間帯で顔見知りも変わりますね。

春の時間に見かけてたのがとある母子です。お母さんは30歳くらいで、安っぽいスプリングコートにスーツ、傷んだハイヒール。子どもは女の子だと先日知りましたが、3歳くらいかな。保育園通いのようです。

朝の通勤路の途中でお嬢さんを保育園に送り、自分はそのまま出社。朝は慌ただしいのかいつも速足です。お嬢さんは腰のポーチの上に抱えられて、カツカツカツ、の足音に合わせて脚がぶらぶら。寝てたのかもしれません。

まあ失礼ながら、生活に追われている感じが見て取れて、旦那は何やってんだ？とよく思っていた。2、3歳って重いんだよね。保育園の送迎くらいやってやれよと。ふと、片親なのかもしれないと気づく。

スーツってことは会社員なんだろうけど、子どもも抱えてるし荷物にも重量感がありハイヒールが折れそうで危なっかしい。古いのを仕方なく履いてるようにも見える。朝から疲れきっている様子が伺える。

で、夏の間会わなかったので、半年ぶりに母子を見かけた。前と同じ時間で、相変わらずのスーツにハイヒール。しかし一つ違うことがあった。お嬢さんが手を繋ぎ歩いていた。

子どもには速足だけどお母さんも以前ほど速くはない。子どもに歩かせるくらいには朝の余裕ができたということだ。ハイヒールのリズムが緩やかになった。

しかし、二人とも支度が雑なのは変わらず。まだ生活にゆとりは無さそうだがお母さんは以前の勝気そうなコートを着ていないからか雰囲気が和らいで見える。お嬢さんは真新しいデニムの上着を羽織っている。

子どもって外から見てると成長早いけど、当事者には永遠に続くような気がするよね。毎日仕事に家事に育児にと追い込まれると無表情になっていく。がんばってるんだね。自分にも新しい上着を買っていいんじゃないかな。

帽子越しにチラッと顔を見ると相変わらず無表情に見えた。綺麗な人だったんだなあと知る。仕事で顔作んなきゃいけないから朝は脱力してるんだろう。子どもの世話は段々楽になるよ。

お嬢さんはタカタカ歩いている。うちの犬を目で追う。大きくなったねー、と密かに成長を喜ぶ自分は口元が緩んでいたかもしれない。視界の端にお母さんの頬も緩んだのがわかる。大きくなあれ。

通り過ぎ、一拍置いて振り返ると二人は何か話していた。「知らない人に笑いかけちゃダメよ」とか言われてたりして（笑）

さじ